シャンプー それは、日本と調和する
彼の車にわざとらしく置いてあったピアスや口紅・・・
金曜に僕を迎えに来た彼から香るのは 彼が使っているシャンプーと違ったり 彼の愛用のタバコの煙とは違ったり・・・
ずきん・・・
とその度に 僕の心に罅が小さく入っていくけれど 僕は気がつかないふりをしている。
・・・・僕も同じだな・・・
離婚しない両親と同じで 僕も真実から目を背けて逃げている。
もし 彼にそのことを咎めたら 彼は「そっか、じゃあ 終わりだね」と軽く言って去っていくだろうと思うと怖かった。
・・・・昔はひとりでも平気だったのにな・・・・
ユウキさんを失うのが怖い。
他人の温もりを知った僕は もうひとりになるのが怖いんだ。
そう思ったとき ポケットに入れていた携帯が ブルッ、と震えた。
僕は周りに人がいないことを確かめて それを取り出した。
案の定 相手はユウキさんからのlineだっだ。
『今日は迎えに行けないから 鍵を使って部屋で待っていなさい』
と素っ気ない文章に 僕は小さい溜息を漏らした。